待ち合わせ 夕美との待ち合わせの場所は新幹線の改札を出たところだった。彼女と初めて会ったのは二週間前だが、僕は彼女の顔をあまりよく覚えていない。僕は昨日の夜電話で彼女に、うまく見つけてくれよ、と頼んでおいた。僕は周りを見渡したが彼女らしき人物は見当たらなかった。僕は煙草に火をつけ、彼女のことを考えてみた。 彼女はただ積極的で行動的なだけなのだろうか?そしてただの遊び好きな女。それなら話は速い。僕もただそれに合わせていればいいのだから。しかしそれなら奴はなぜわざわざこんな遠いところまでやって来るんだ?どういう理由で?この間のひと晩で恋愛感情が生まれた・・・・・・まさか。他に何かあるような気がする。 僕があれこれと考えあぐねていると、ふいにうしろから誰かに肩をたたかれた。 「何考えてたのよ」とその女は言った。 「ちょっとの間見てたのよ、おもしろいから」そう言うとその女は不思議な微笑みを浮かべた。それは何だか見覚えがあるようでないような、懐かしいようでそうでもないような僕が今までに見たことがない奇妙な微笑みだった。 その女が夕美だと気づくまでに少し時間があった。僕はそのことを彼女に悟られないように取りつくろおうとした。 「やぁ、久しぶり」 「ほんの二週間だけどね」その柔らかい声のトーンが僕に、彼女が先日知り合ったばかりの夕美という女だということを確認させた。 このページのコンテンツを表示するにはJavaScriptを有効にする必要があります。 Tweet