異常 淳子から突然電話が入った。僕は彼女とはほとんどしゃべったことがなかったので少し驚いた。 「お話ししたいことがあるんです」と淳子が言った。たぶんFのことだろう。何かあったのだろうか?僕はいつも行く例のバーの場所を彼女に伝えた。 「今から三十分後に」と僕は言った。 僕がバーに行くと、彼女はもうすでに隅のテーブルに座っていた。彼女は僕を見つけるとほんの少し笑顔を浮かべた。顔色はそんなに悪くないようだ。体調ももとに戻りつつあるのだろう。 「やぁ、久しぶり」と僕は言った。 「本当に突然ごめんなさい」 僕たちは少しの間、久しぶりに会った人間どうしがするお決まりの会話を交わした。そして、そのあと僕は本題に入った。 「奴のことだろう、話って」 「ええ」 「何かあったの?」 彼女は順を追って彼らのこれまでの経緯を話し始めた。 「あのとき」と彼女は言った。「私は彼に一ヵ月間の冷却期間を言い渡されて、もう本当にがっくりときちゃったんです。それまで四年間かかって築き上げてきたものが、何だか音を立てて崩れていくような・・・・・・。それで、彼から聞いているかも知れないですけれど、私、拒食症にかかちゃって」 「ああ、聞いてる」 「そんなとき、父の薦めで見合いをして、そのまま、何が何だかわからないような感じで婚約してしまったんです。何でもいいから、すがれるものがあれば、すがりつきたい心境だったんです」 「・・・・・・」 「でも、今では私もその人を愛し始めているんです。少しずつですけれど、それは確かなんです。問題は 」 このページのコンテンツを表示するにはJavaScriptを有効にする必要があります。 Tweet