新漫画雑誌校了 新雑誌の校了を祝って、僕は川島さんと夕食を共にすることになった。 僕は作品に『黄昏色のBARが語りかけてくる』という少し長めのタイトルをつけた。新雑誌が発売されるのは一ヵ月後だ。 「あなたの作品、社内では好評よ」と川島さんが言った。 「そうですか」 「連載化の話はもう少し待ってね。読者の反応が返ってきてからじゃないと説得力が出ないから」 「ええ」 「でも私は大丈夫だと思ってる。あの作品なら、必ず今の若い読者たちから何らかの支持を得られると思う」 「ありがとうございます」 「今回の作品は絵もストーリーも、何か感じるものがあるわね」 「そうですか?自分ではまだよくわからないですけれど」描き上げた作品と客観的に接するためにはある一定の時間が必要だ。でも、今回の作品では確かに『燃え尽きた』という感覚がある。これはたいせつなことだ。 「あの作品をもっと膨らませれば、長編にできるんじゃないかしら?」 「ええ、僕も描いたあとでそう思いました」 「連載はそれでいったらどうかしら?」 「でも、長編なんてまだ描いたこともないし不安だなぁ」 「私も力になってあげるし」 川島さんと別れてからの帰り道、僕は今回の仕事で自分の中に大きな自信が生まれたことを実感した。そして僕は、雑誌の創刊号ができたら、それを夕美に贈ろうと思った。彼女には漫画の仕事のことはまだ何も言っていないが、何しろこの作品は彼女と出会わなければ描くことのできなかった作品なのだから。 このページのコンテンツを表示するにはJavaScriptを有効にする必要があります。 Tweet