私は立場が…… 「私は立場がなかったわよ」 夕美が腹立たしげに車のドアを叩く音で僕は目が覚めた。 「店の人に挨拶もなしに出ていって、そのまま帰って来ないんだもの」と夕美が言った。 「なぜ起こしてくれなかった」 「何度も見に来たわよ。でもグーグー寝てた」 「・・・・・・」 「店の人も心配してたのよ」 「今何時?」 「ビーフ味」 夕美が車を走らせる。店の前を大きくUターンしながら道路に出る。風景がまだ少しぼやけている。 「どこへ行く?」と僕が訊く。 「ホテルに決まってるじゃない」 このページのコンテンツを表示するにはJavaScriptを有効にする必要があります。 Tweet